真っ白な君のスケッチ


【主な登場人物】

■女の子(君)
いつも緑の丘にいる女の子
■男の子(僕)
緑の丘に通う少年
■小鳥
黄色い羽のカナリア


【ストーリー】

緑の丘には 必ず君がいた
金髪で 綺麗なロングヘアをした
真っ白な服の似合う 可愛い女の子だった
君はいつもスケッチブックを持って
丘で絵を描いていた

僕はすぐに君に恋をした
君に会うために緑の丘に通うようになり
ある日勇気を持って話しかけてみた
「絵を描いているの?」
君はにっこり笑って 首を縦に振った
その笑顔は本当に真っ白で 爽やかで 綺麗だった

僕たちは色んな話をした
自然が好きなこと
草木を大切に思う気持ち
僕達はとても意見が合った


「できたっ」
いつの間にか眠ってしまった僕は 君の声で目が覚めた
絵ができたようなので 僕は早速見せてもらった
――え?――
けどそれは 何も描かれていない ただの真っ白なスケッチブックだった
何度も君の顔を見上げたけれど 君はずっとにこにこしていた
「真っ白だけど・・・?」
一応言っておいたものの 君は「うん、これでいいの」と言って相変わらずにこにこしていた

翌日 僕はまた君に会いに行った
君の肩には 一羽の小鳥が乗っていた
綺麗な黄色い羽の小鳥だった
「カナリアっていう鳥だよ」
どこから連れてきたのかと聞くと 森の方から飛んできたという
僕は珍しいと思いながらも 手を出すとすぐに懐いてくれた

また次の日も僕は緑の丘に行った
白の似合う君に 白い花の髪飾りをプレゼントした
君はすぐに髪止めをほどくと 白い花の髪飾りを付けて とても喜んでくれた
白い花の髪飾りを付けたまま その真っ白なドレスで 君はクルクルと踊り出す
僕は見惚れてしまった
その視線に気付いた君は 恥ずかしそうに照れ笑いをした
その笑顔がまた とても可愛くて
僕は目を逸らせなかった

その次の日も また次の日も 僕は緑の丘へ行った

そして 緑の丘が一面タンポポで満たされた頃
僕はこんなにも好きな君に 気持ちを伝えた

   すると

    君は そっと 僕の頬に触れて

      顔を近付けた


   鼓動が速かった


       タンポポの綿毛が 春風に乗って

             空を舞った





ある日 緑の丘に向かう途中 カナリアが道端で弱っていた
何かに襲われたのか 周りには羽根が飛び散っていた
僕はカナリアを緑の丘へ連れて行った

君は弱ったカナリアを見ると すぐにスケッチを描き始めた
僕は不思議に思いながらも 初めて目の前で 君のスケッチを見た
キラキラと光る線で描かれたそのスケッチには
まるで写真のように 鮮明にカナリアの絵が描かれていた

絵が完成すると 光の線は風のように空を舞って カナリアに降り注いだ
そして君のスケッチブックはまた真っ白になり
カナリアが目の前で元気になった
僕は知った 君はこの場所を守り続けていたんだ

その直後 君はその場に倒れ込んでしまった
――君の身体は弱っていた
スケッチブックで美しい草木を描き続け
君は自分の体力と引き換えに 美しい森を作っていた――
「この森も、この丘も、君が描いたものだったんだね」

僕は悩んだ
このまま絵を描き続けたら 君が消えてしまう気がした

その時 目の前にいたカナリアが
爽快に羽を広げて 僕の真上ををはばたいた
君は優しい笑顔で言った
「これでいいの」

そして君は 僕が渡した髪飾りをほどいて
髪飾りを描き始めた

絵を描き終えると 君は静かに目を閉じた
僕は君の髪に 白い花の髪飾りを1つ付けた
その姿は 何よりも綺麗で 何よりも優しくて

何よりも真っ白だった



※この設定/物語は、Yukiが思い描いたものを
簡略的あるいは部分的に抜き出して記述したものです。