枯れ涙の行方〜歌を歌えたら〜


【主な登場人物】

■カナリア
人間型ロボットの女の子。

■青年
カナリアの開発者


【ストーリー】

「・・・リア・・・カナリア」

彼に呼びかけられ 目を開けるとそこは薄暗い研究所でした

わたしは彼によって身体を授かり 言葉を交わし
自らの意思で動くことのできるロボットなのだと知らされます

この頃 わたしは感情を持つことができず 意思を持っただけの機械でした
歩行のバランスを計算し
インターフェースによって外界の情報を受信し
質問に対する適切な回答をするだけです

しかし その後もわたしは彼と様々な実験を繰り返し
わたしはついに感情を覚えることができるようになりました

初めて感情を覚えた時 わたしはとても感動しました
世界が全て新鮮で
彼の笑顔に喜び 自分の未来にも希望を抱き

わたしは  彼に恋をしたのです

これが恋愛感情だということはすぐにわかりました
最初彼は驚いていましたが それはすぐに喜びに変わりました
愛に対する喜びなのか 成功に対する喜びなのかはわかりませんでしたが
それでも その喜びはわたしにとっても嬉しいものでした

その後も暫く 彼とわたしの実験は続きました


ある日 わたしの身体に異変が生じました
記憶の一部が突然消失し 聴覚や視覚にノイズが混ざり
動作に支障が生じるようになってしまったのです

彼は原因を探り 何度も調べてくれました
そして わたしの身体に重大な欠陥が見つかりました

開発責任者は彼にいいました
――カナリアを諦めて、新しい型の開発を行う――

彼は悩みました

わたしは恐怖と不安に押し潰され
初めて彼に弱音を吐き 涙を見せました
「わたしは壊れて捨てられて
 あなたは新しい型の開発に行ってしまうんだ!」

その時彼は 究極の罪を背負った顔をしていました
そしてわたしも罪を負ってしまったのです


それ以来 わたしは彼の前では極力笑うようにしました
「大丈夫、わたしはロボットだから怖くないよ」
そう言い張って 彼を安心させようとしましたが
彼はずっと悲しい顔をしていました


やがて身体は本格的に動かなくなり
わたしは笑顔をなくし 言葉を交わすこともろくにできなくなりました
それでも彼はわたしのそばで
ずっと 手を握ってくれました  涙を流しながら

そしてある日 彼のノイズ混じりの話を聞いている最中に
聴覚が完全に遮断されました
彼が気付いていなかったので わたしはそのまま彼の話す姿を見つめていました
気が付くと いつからか彼は悲しい顔をしなくなり 涙も流さなくなっていました

その数日後 視覚を含めた全てのインターフェースが完全に遮断されました
皮肉にも感情と思考回路だけが残り わたしは独りになりました
そしてわたしは 心の意味を考えました

「わたしは 何のために 心を 手に入れたのだろう」


――あなたはきっと 罪の意識を抱え続けるのでしょう
  言葉が届くのなら 悲しみを捨てて 強く 生きて――



※この設定/物語は、Yukiが思い描いたものを
簡略的あるいは部分的に抜き出して記述したものです。

【あとがき】

この曲は、いずれ科学技術によって「心」が作られるようになった時に、
その過程でこんな悲しい出来事も起こるかもしれないなという想いが込められています。
心の開発にはそれなりの覚悟がいるかもしれませんね。