上手なズレ


近年、ピッチ修正ソフトやVOCALOIDなどが登場したことによって、多少「正しい音程での歌唱」が容易になったように思われます。

ただ、「何でもかんでも完全に音が正しければ良いわけじゃない」なんてことをよく耳にします。
確かにその通りで、ズレているからこそできる表現もあるのですが、それはそもそもずらさずに歌える人が、あえてずらすことで表現できるものであって、単にずれてしまうのとは違います。
実際、人が聴いても違和感のないような「上手なズレ」を作ることは中々難しく、僅かな違いによって表現は変化するものです。
わざとずらして歌うという意図があり、本来ずらさずに歌える人だからこそ、そのズレ具合を微調整することで綺麗なメロディを作ることができます。

ちなみに、私も今はまだ「綺麗に歌う」ことができません。音を合わせるので精一杯です。
自分で上手く歌えていないことがわかるため、もどかしく思うことが多々あります。

なお、Jazzなどでよく不協和音と呼ばれる音を用いますが、上手な人の曲や演奏では不協和音がいたって自然に聴こえます。
「不協和音を不協和音として聴かせない」ようにしているからです。
これは不協和音ならではの音の重なりを知り、巧みに使っているからこそできる技であり、上手なズレにとてもよく似ています。

結局、ズレを使うにしろ使わないにしろ、「リスナーが違和感を感じないようにする」且つ「リスナーが心地良くなるようにする」ことが鉄則であると私は考えます。
ここでいう「リスナー」というのは「自分」であっても構いません。
自分で聴いて全く違和感を感じない、且つ心地良ければそれは素晴らしい曲なのだと思います。



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